東大卒無職が9か月で公認会計士試験を突破した記録

仕事を辞めて受験専念をした東大卒が6か月で公認会計士短答式、その後3か月で論文式に挑んだ記録です。

管理会計論・原価計算を得意科目にするには

管理会計論、特に原価計算が難しいという声をよく聞きます。管理会計論の勉強方法はこちらに記載していますが、抽象度を少し上げてどのような勉強方法をしていたかを書いてみたいと思います。私は学習初期から管理会計論は得意であったため、皆さんが学習を進める上でのヒントになれば嬉しいです。少し理系向きな内容かもしれませんが、算数や数学にアレルギーがなければ参考になるかもしれません。

 

原価計算が難しい理由

原価計算が難しい理由は、典型パターンの暗記で対応することができないからです。

原価計算では、完成品や仕掛品がどれだけ材料費、加工費、減損費などを負担するべきか、を合理的に計算します。また、減損や仕損などを組み合わせれば、目新しく、複雑な問題を作ることができます。

つまり、典型パターンの暗記だけで対応できる問題は少なく、どのように計算すれば合理的かを理解していなければ、ひねられた出題には対応できないということです。実際には典型問題もあり、特に短答式では時間制約のため典型問題さえ取れれば十分という近年の状況はあります。しかし、感覚的には管理の典型問題の比率は簿記よりも小さく、論文式も含めて管理で安定して点を取るためには、典型問題以外にも手をつける必要があると考えています。

 

私も学習初期はそうでしたが、少しひねられた問題に対して、手持ちの典型パターンで対応できず、その後解説を見て、そんな計算方法知らなかった、このパターンも覚えてしまおうと考える人もいると思います。このような勉強方法では暗記するパターンだけが増えてしまい、かつパターンは無限に存在するので、いつまでたってもできるようになっている感覚がつかめません。特に少し応用的な問題が出題されやすい論文式試験には歯が立たないことになってしまいます。

 

学習で意識するべきこと

テキストの例題でも何でもよいので、暗記した典型パターンを一度忘れて、まっさらな状態で制限時間を設けずに自分が合理的だと思う計算をしてみてください。一度解法を暗記した問題だとやりにくいかもしれないので、答練などある程度網羅性がある問題集などでやってもよいと思います。

 

覚えた解法を使うのではなく、どうやったら一番合理的(正確)に計算できるかを考えて自分なりに計算してみます。計算したら解答を見て、自分が思う合理的な計算と解答とのズレを確認し、どこが自分の考え方よりも合理的なのかを把握し、自分の考え方を修正します。逆に正解できていた場合は、自分の考え方が正しいということになり、その後も自分の考え方に沿って解答すれば正解できるということになります。

 

自分の素直な考え方とは別に解法を暗記するのではなく、自分の素直な考え方を正しい考え方に常に修正していくイメージです。先入観がある状態(解法を暗記した状態)では解説を見ても本当の意味で腹落ちすることはないため、暗記した解法を無視した状態で問題を解くことが必須です。

 

このようにすると、自然と計算の合理性を考えながら問題を解くことができるようになり、典型パターンの暗記ではない本当の計算力がつきます。今までなんとなく計算していて間違えていたような問題も、一歩立ち止まり、こう計算したら合理的だよな?と思うことができるようになるはずです。

(余談ですが、私は講義を見るとどうしても典型パターンの暗記という意識が強くなってしまうと感じたため、原価計算の途中から講義を見ることをやめました。)

 

また、原価計算に比べて管理会計(差額収益、NPVの計算等)を苦手という人が少ないのは、後者の方が型が少なく、学習初期の段階でも自分で考えれば解けるという意識があるからだと思います。原価計算もこのような意識を持てるようになったら、多くの受験生を出し抜くことができるようになると思います。私の感覚としても原価計算は考えれば全て解けるという感覚を持っていました。

 

かなり抽象的な話になってしまったので、上記の自分なりの計算という部分について例を挙げてみます。減損の安定発生がある際の完成品の加工費を考えてみます。私は減損の安定発生の問題は台形の図を下書きとして書いて解くと習いましたが、そんなことは全て無視です。

月初、月末仕掛品がないとして、完成品から安定的に減損が発生します。最終的に投入量の20%が減損します。完成品は80㎏、加工費は投入から完成までに1kgあたり100円かかります。

20%が減損ということは投入量の80%が最終的に完成品として残るということ、つまり投入量は80㎏÷80%で100㎏です。また、100㎏と80㎏の差20㎏が減損になります。ここで完成品として残った部分80㎏については、投入から完成まで一貫して加工されているので80㎏×100円で8000円の加工費がかかっています。

一方、減損の20㎏についてはどうでしょうか。なんとなく三角形の図(完成品と合わせると台形の図)を書いて加工費を計算する人が多いのではないでしょうか。一度その方法を忘れて考えてみます。

減損分については投入から完成まで加工されていないので、加工費を20㎏×100円として計算してしまうと間違いです。投入から完成まで一定のペースで材料が消えていき、投入した20㎏は最終的に0㎏になります。加工開始直後に消えるものもあれば、加工終了直前に消えるものもあるということです。前者はほとんど加工されていないのに対し、後者はほとんどフルに加工費がかかっています。

 

上の図の〇で考えると、加工進捗度0%で減損するものもあれば、25%、50%、100%で減損するものもあります。安定した減損発生ではこの〇が無数にあるので、結果的に上の図の三角形(20㎏×100%÷2)が実質的に加工された材料と考えることができます。

あるいは0%と100%の〇、25%と75%の〇、30%と70%の〇のように加工進捗度の合計が100%となるようにペアで考えると、2つの〇でフルの加工がされるので、20㎏の半分の10㎏が加工された材料と考えられます。よって、10㎏×100円で減損分の加工費は1000円です。

このように考えると、減損の安定発生において台形の図を書いて計算する理由が分かると思います。

 

一度このように下書きの考え方や計算方法の根本から理解することができれば、必要な下書き、解法を思い出すということは必要なくなります。あとは考える時間さえあれば解けるという状態に持ち込むことができるため、問題演習を行うことによりスピードを上げれば合格点が取れるという感覚が掴めると思います。

 

上記の学習方法の注意点

上記の学習方法は本質的であると考えていますが、適性によっては典型パターンの暗記よりも時間はかかるかもしれません。

また、思考が大切とは言っても、暗記する部分は確かに存在します。例えば、先入先出法では月初仕掛品からは仕損が発生しないとみなす、などです。このような点は覚えておくしかありませんが、典型パターンの暗記という学習よりも圧倒的に負担は少なくなるはずです。メンテナンスにかかる時間もかなり減ると思います。

 

加えて、上記の学習方法は論文式試験対策向きともいえるかと思います。短答式試験では時間が極端に短く、考える必要のある問題は解くことができないことが多いため、十分に勉強しても報われないことがあります。また、よく言われる簡単な問題だけ得点できれば十分という性質は、管理計算では他の科目に比して強いです。

対して論文式試験では短答式に比べて難しい見た目の問題が出題されやすく、苦手意識が強いと苦しいかもしれません。また、時間の制約は短答式試験よりも緩いことから、考える必要のある問題にも手を付けることができます。

なので、論文式試験も見据えて原価計算をやっておきたいという人にはお勧めの学習方法だと思います。